ぼたえもん童話集 『 眼玉売り 』③

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〔地歌〕鞄の中から取りだした、金金光る金印、右手に構えた大鋏、
チャキ チャキ チャキといわせれぱ  決心したる権作も、二、三歩後へ
タジタジタジ。

爺=権作を追うように近寄って=「さあ、眼をあけないか」

=権作ちょっとあけて、おそろしさにまたつぐむ。爺さん笑いながら何か
口の中で呪文をとなえて、左手に持っている眼を権作の左右両眼の上に
かわるがわる押しつける。この時、大鋏は眼の上でチャキ チャキいわすだけ。
と、たちまちすでに眼の玉は取りかえられている=

権=キョロ キョロ あたりを見まわして=「あっ、見える 見える、すてきに見える。
何もかも黄金色じゃ・・・妙  妙、 これは妙・・・」と喜びまわる。

太郎松、次郎助、お千代もこのさまを見て、われさきにとあらそって、

次「お爺さん、うらには、"美人印"を入れてくだされ」

千「うらは左に"お金印"、 右に"美人印"」とつめ寄る。

爺「待て待て、順番だ  順番だ」

=と制しつつ、まえと同じようにして手術をしてやる。手術が終わるや、
各自それぞれに=

次「これは奇妙、山も川もなんという美しさだ。あっ、お千代のカボチャづらが
観音さまのように見えだした。 ーーどこもかしこもまるで夢のような美しさだ」

千「オホホホ、アハハハハ、まアなんでこんなにうれしいのだろう。アハハハハ、
ああうれしや、おもしろや」

太=片手で右の眼をふさぎ、左の眼だけをあけて見まわしながら =「馬の
クソまでが黄金の塊に見えるわい。そこらの小石はみな金貨や銀貨ばかりじゃ。
ーーおっと、こちらはこうすれば」=で、こんどは右の眼をひらいて=「お千代坊の
あばたづらまでが、弁天さまに見えるわい」

=と、お千代を見あげる。お千代、わざとらしく口をとがらす=

四人「おっと、がってん」

=と歌に合わせて身ぶりよろしく四人は踊りはじめる。

爺さんは手をうって拍子をとる=その歌

めでたや  めでたや  めでたやな   「美人印」で見るなれば
かぼちゃのおかかが観世音   梅干し婆アが弁財天
めでたや  めでたや  めでたやな   「笑い印」で見るなれば
雷さんは高笑い  閻魔も地蔵に見えてくる

めでたや  めでたや  めでたやな   「お金印」で見るなれば
馬のクソでも金の山   木の葉、草の葉、札の束

〔四人合唱、調子かわる〕

森の神さん ありがとう    森の爺さん ありがとう
鞄いっぱい眼を持って   明日も忘れずやって来な

=かくて四人は下手に、爺さんは上手にそれぞれ退場

                          ・・・幕・・・=



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このブログ記事について

このページは、出口眞人が2010年8月30日 11:33に書いたブログ記事です。

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